こんにちは。サイレントプロバイダーのMです。
台風やゲリラ豪雨など、最近は自然災害のニュースを目にする機会が増えています。
特に土砂崩れや土石流のニュースでは、被災した方から「発生する前に普段とは違う音が聞こえた」といった話を耳にすることがあります。
私たちは危険を察知するとき、つい「目で見て確認する」ことを意識しがちです。
しかし自然災害では、目に見える大きな変化が起こる前に、「音」が異変を知らせるサインになることがあります。
では、実際にどのような音に注意すればよいのでしょうか。
今回は、自然災害の前後に聞こえることがある「危険な音」と、なぜそのような音が発生するのかについて見ていきます。
こんな音がしたら危険!
大雨が続いているとき、特に注意したいのが次のような音です。
「ゴーッ」「ゴゴゴ…」という山鳴り
→ 土石流などの前兆の可能性
斜面から「パラパラ」と小石が落ちる音
→ がけ崩れの前兆の可能性
家や地面の周辺から聞こえる普段とは違うきしみや異音
→ 地すべりなど、地盤が動いている可能性
川沿いで鳴るサイレンや警報・警笛
→ ダムの放流などによって川の水位が上昇する可能性
国土交通省でも、土石流の前兆として「山鳴り」、がけ崩れの前兆として「小石がパラパラ落ちてくる」といった現象を紹介しています。
ただ、「この音が鳴ったら必ず災害が起こる」というものではありません。
反対に、何の音も聞こえないまま災害が発生することもあります。
あくまでも、普段とは違う音や変化に気付くためのひとつのサインとして考えてみましょう。
「ゴーッ」という山鳴りは、なぜ起こる?

まずは、土砂災害の前兆として知られている「山鳴り」です。
大雨が続いているとき、
「ゴーッ」
「ゴゴゴ……」
と、遠くで雷が鳴っているような低い音が山の方から聞こえることがあります。
そもそも、なぜ山からこのような音が聞こえるのでしょうか。
ポイントは、大雨によって山の中の土や石が動き始めることです。
雨が降ると、水は山の表面を流れるだけでなく、少しずつ地面の中にも入り込んでいきます。
雨が長く続けば、土の中には大量の水がたまります。
土は乾いているときには、土の粒や石などがお互いに支え合っています。
ところが、多くの水を含むことで斜面が不安定になり、土や石のかたまりが動き出すことがあります。
非常に大きな土砂や岩が動けば、地面そのものが振動します。
さらに、岩同士がぶつかったり、土砂が谷を流れ始めたりすることで、たくさんの振動が発生します。
それらが重なって、離れた場所では「ゴーッ」「ゴゴゴ……」という低い音として聞こえることがあります。
つまり山鳴りは、単純に「山が鳴っている」のではなく、山の中で大量の土や石が動くことで発生する振動や音が、私たちのところまで伝わってきていると考えると分かりやすいでしょう。
国土交通省も、土石流の前兆のひとつとして山鳴りを挙げています。
大雨が続いているときに山の方向から普段とは違う低い音が聞こえた場合、音の正体を確認しようと近づくのは危険です。
「パラパラ」という小さな音にも注意

危険な音というと、「ドーン」「ゴーッ」といった大きな音を想像します。
しかし、注意したいのは大きな音だけではありません。
がけ崩れの前兆として知られているのが、斜面から小石が
「パラパラ……」
「コロコロ……」
と落ちてくる現象です。
これも、大雨による斜面の変化が関係しています。
雨水が地面の中に入り込むと、斜面をつくっている土が多くの水を含むようになります。
すると、それまで安定していた斜面の表面が少しずつ緩み、小さな石や土が落ち始めることがあります。
大きながけ崩れが起こる前に、まず表面にある小さな石が動くことがあるわけです。
そのため、
これまで何も落ちていなかった斜面から、急に小石が落ち始めた
という変化には注意が必要です。
特に、自宅の裏に急な斜面やがけがある場合には、大雨の際に普段との違いを意識しておきたいところです。
また、音だけではなく、
「がけに亀裂ができた」
「がけから出てくる水が濁った」
といった変化も、がけ崩れの前兆として国土交通省から紹介されています。
「ミシミシ…」いつもと違う家の音にも注意

家にいると、ときどき「ミシッ」「パキッ」と音がすることがあります。
木造住宅では温度や湿度の変化によって材料が伸び縮みするため、普段から家鳴りがすることもあります。
そのため、
家がミシミシ鳴る=土砂災害の前兆
というわけではありません。
ただし、大雨が長く続いているときに、
地面に新しいひび割れができた。
塀や擁壁が傾いた。
道路や庭に段差ができた。
いつも開いていたドアや窓が急に開けにくくなった。
そのうえで、普段とは違うきしみや異音がする。
こうした複数の変化が同時に見られる場合には、地盤そのものが動いている可能性も考えられます。
地すべりは、斜面を構成している大きな土のかたまりが滑るように移動する現象です。
地面が動けば、その上に建っている家や塀などにも力が加わります。
その結果、建物がわずかに変形したり、部材同士に力がかかったりすることで、普段とは違う音が発生することがあります。
ここで重要なのは、音だけを見るのではなく、周囲で起きている変化と一緒に考えることです。
大雨が続いているときに「いつもと何か違う」と感じた場合には、その違和感を軽く考えないことが大切です。
川で聞こえるサイレンや警笛は「人が知らせる危険な音」

自然が発する音だけでなく、私たちに危険を知らせるために、意図的に鳴らされる音もあります。
その代表的なものが、ダム放流時のサイレンや警報、警笛、放送です。
川の近くで、
「ウーッ」という大きなサイレンが聞こえた。
警報音が繰り返し鳴っている。
スピーカーから放流を知らせる放送が流れている。
このようなときには注意が必要です。
ダムでは、下流の河川で急激な水位上昇が予想される場合などに、サイレンや放送を使って周辺へ知らせることがあります。
たとえば国土交通省のななせダムでは、放流によって下流河川の急激な水位上昇が予想される場合、警報局からサイレンを鳴らし、その後に水位上昇の見込みなどを放送しています。国土交通省は「サイレンが鳴ったら川のそばから離れる」よう呼びかけています。
なぜ、放流する前にわざわざ大きな音を鳴らすのでしょうか。
それは、今いる場所では川に変化がなくても、このあと水位が上昇する可能性があるからです。
特に注意したいのが、川遊びや釣り、キャンプなどで河川敷にいるときです。
自分がいる場所は晴れていても、上流では激しい雨が降っていることがあります。
その結果、ダムからの放流が行われたり、上流から多くの水が流れてきたりして、時間が経ってから下流の水位が上昇することがあります。
目の前の川が穏やかだからといって、安全とは限らないのです。
だからこそ、サイレンや警笛、警報放送は、
「これから川の状況が変わるかもしれないので、川から離れてください」
という重要な合図になります。
水辺で聞き慣れないサイレンや放送が聞こえた場合には、その場で様子を見るのではなく、まず川から離れることが大切です。
なぜ災害の前に「音」が変わるのか
こうして見てみると、自然災害と音にはある共通点があります。
普段は動かないものが、動き始めていることです。
山鳴りなら、大量の土や石。
がけ崩れなら、斜面をつくっている土や小石。
地すべりなら、地面そのもの。
川の増水なら、大量の水。
物が動いたり、ぶつかったり、変形したりすれば振動が発生します。
その振動が空気や地面を伝わり、私たちが「音」として感じます。
つまり自然災害の前に聞こえる「危険な音」は、何か特別な警報音が自然から鳴っているわけではありません。
自然の中で普段とは違う大きな変化が起こり、その結果として生まれた音なのです。
「音が聞こえるまで待つ」のは危険
ここまで「危険な音」について紹介してきましたが、最も気をつけたいことがあります。
それは、音が聞こえてから避難すればよい、というわけではないことです。
山鳴りや小石の落下などの前兆現象は、必ず起こるものではありません。国土交通省も、こうした前ぶれが災害発生前に必ず見られるわけではないとしています。
さらに、激しい雨が降っていれば、
雨が屋根を叩く音。
風で木が揺れる音。
川の流れる音。
こうした大きな音によって、周囲の異変が聞こえなくなることも考えられます。
「山鳴りが聞こえないから大丈夫」
「小石が落ちていないから大丈夫」
とは判断できません。
大雨のときには自治体の避難情報や気象情報を確認し、土砂災害の危険度については気象庁の「土砂キキクル」なども活用できます。気象庁も、危険度が高まる前から早めに避難を判断することの重要性を呼びかけています。
いつもと違う「音」は、異変に気付くきっかけになる
普段聞いている川の音。
雨の音。
山から聞こえてくる音。
家の中で聞こえる音。
毎日の生活では、それほど意識することはないかもしれません。
しかし自然災害が起こるときには、土、水、石、そして地面そのものが普段とは違う動きをするため、「いつもとは違う音」が生まれることがあります。
ゴーッという山鳴り。
斜面から聞こえるパラパラという音。
大雨の中で突然聞こえる、普段とは違う異音。
川沿いで鳴るサイレンや警笛。
大切なのは、音を聞いて災害を予測しようとすることではありません。
「いつもと違う」
という変化に気付き、それを危険から離れるきっかけのひとつにすることです。
大雨や台風が増える季節。
天気予報や防災情報とあわせて、ときには身の回りの「音」にも耳を傾けてみてはいかがでしょうか。